肩の周りの痛みと言っても、その痛みを起こしている原因や症状はさまざまです。
肩や腕のしびれは、どの部位で神経の圧迫が起きているのかを考え施術しないと症状の改善は見込めません。
肩の痛みは、何が原因で痛みが出ているのか?なぜ腕が上がらないのか?動かせないのか?痛みのある部位や動かしてみての可動制限、訴える症状からどこに問題があるかを特定します。
レントゲンやMRIを撮っても異常がなく、ステロイド注射をしても痛み止めを飲んでも夜眠れないほど肩が痛い患者さんがいます。そのような場合でも、肩周りの徒手検査・日常の生活スタイル・痛む動作や部位から、原因を特定し施術することで改善が見込めます。
腱板断裂や肩峰下滑液包炎の急性期など医師の診察、治療が有効な場合は患者様と相談して専門医を紹介します。
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肩上部(肩こりが起こる場所)や肩甲骨の内側が痛む場合、また腕の痛みやしびれがある場合に問題のある可能性が高いのが首の部分での神経圧迫です。脊髄神経が背骨やヘルニアによって圧迫されているものや、末梢神経が椎間孔で圧迫されていることがあります。
首で神経の圧迫が起こる原因は、猫背や顔が下に向く姿勢を長時間取ることで首の骨がストレートネックになってしまっていることが影響しています。
徒手検査をして神経がどの辺りで圧迫されているのか見当をつけます。そして圧迫箇所を取る除くように鍼灸治療を行います。ストレートネックがみられる場合は、硬くなった筋肉の部分を手技療法で動かして改善をしていきます。
首や肩の前の部分で腕に行く神経が絞扼(こうやく)されることで腕に痛みやしびれを起こす疾患です。絞扼される部位によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群に分かれますが、それを総称して胸郭出口症候群と言います。一般的に腕を上げていると腕全体が重くなったり痛みやしびれを起こすことが多いのですが、絞扼される部位によっては腕を下げると痛みやしびれがでる方もいます。
また、中には①首からの神経痛と②胸郭出口症候群が合併している方もいます。
問診や徒手検査をして絞扼が起きている部分を見つけます。そして、神経の絞扼されている部分を取り除くように鍼灸治療と手技療法を行います。斜角筋症候群や過外転症候群と比べて肋鎖症候群はすぐに良い変化が出にくいのですが、治療を継続することで骨格も少しずつ変わっていき改善がみられることがほとんどです。
胸郭出口症候群と同じく、筋肉の隙間を通る神経が肩の後ろ側で絞扼されて起こる疾患です。
症状として肩の後ろの痛みや、肩の外側にある筋肉や腕に痛みやしびれがでます。
あまり知られていない病名ですが、この部位に問題があり症状を起こしている方は少なくありません。しかし、絞扼されていることが分かれば症状の改善は見込めます。
猫背やなで肩・巻き込み肩などがあると関係する筋肉が緊張しやすい為、普段の姿勢も影響すると考えます。
肩の動きと痛みやしびれの出方などを総合的にみて、この疾患があるかを判断します。
絞扼されている部分を取り除くように鍼灸治療を行い、姿勢や肩の位置を考えた手技療法を行います。
肩関節には腱板と呼ばれる関節を安定させる筋肉が四つあります。その筋肉が繰り返し使うことで、擦れて断裂したり、転んで手や肩を着くことで断裂することがあります。
断裂した筋肉の部位によっては、腕が上がらなくなったり、肩の動きに制限がでることがあります。
腱板が断裂(完全に切れる)した場合に、自然に断裂部が修復され治ることはありません。
腱板断裂が疑われた場合には専門医に紹介をして、MRI検査で断裂の有無を確認してもらいます。切れた断裂部分を治したい場合は、縫合手術をお願いすることになります。
しかし、患者様の意向で手術をしない選択をした場合には保存療法で様子を見ていくことになります。
当院には、鍼灸治療や手技療法で痛みの緩和や、拘縮予防をして動かせる状態を維持している患者様もいます。
五十肩は中年以降に肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として明らかな原因なしに発症した痛みと運動障害を認める疾患群と定義されています。症状が強いと何もしないで腕を動かさずにいる時にも痛みがあります。腕を上げていく途中で動きの制限が起きるのですが、制限が起きた時に痛みも起こすのが特徴です。
五十肩は「時期が来れば治る」とか言われますが、中には3年経っても痛みと拘縮があり来院される患者様もいます。拘縮をおこしている部位や筋肉を特定して治療をすることで、痛みと拘縮の期間は短縮されます。
当院は鍼灸治療で痛みを早期に落ち着かせます。そして何処の筋肉に問題があるのかを考え、制限を改善するようマッサージ・ストレッチを積極的に行い、動く範囲を広げていきます。
肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎、などは突然誘因なく肩に激痛が起きて腕を動かすことが出来なくなるのが特徴で原因は不明とされています。しかし、私は肩を回して動かさない、肩周りの筋肉のストレッチを普段からしないことで腱板に石灰が沈着したり、動きが悪くなることで滑液包に負担がかかり炎症を起こすと考えます。
上腕二頭筋長頭腱炎は肩や腕を使って同じ動きを繰り返したり、スポーツで腕を使い過ぎることが原因です。腕を上げたり、肘を曲げたり、物を持ち上げる時に肩の前面に痛みが出ます。炎症が強いと安静にしていても痛みがあり、夜も眠れないこともあります。
肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎などの初期で痛みの強い場合は、肩関節を包帯などで動かないように2~3日固定し、症状が落ち着いてきてから肩周りの関節を動かしていく手技療法を加えて行います。初期で激痛がある場合は、患者様と相談し専門医を紹介することもあります。
上腕二頭筋長頭腱炎は鍼灸治療が非常に有効な症状の一つです。手技療法を加えて行いますが、間違った腕の使い方で起きることがある為、動きの修正を行うこともあります。
野球肩は、投球動作に伴って生じる肩に痛みの総称です。上腕骨骨端線障害(リトルリーグショルダー)や肩峰下インピンジメント・関節唇損傷などがありますが、いずれも肩の使い過ぎにより発症します。
上腕骨骨端線障害は主に小学生で、まだ骨がしっかりしていない時期に多く投球することで成長軟骨の部分に損傷が起こります。投球をせずに一定期間の安静が必要になりますが、この症状が疑われた場合は専門医に紹介します。
肩外側の部分(骨の真下)が投球時に痛みを生じます。損傷がひどくなると腕を真横に上げるだけで痛みがでます。肩峰下イピンジメントとは、肩関節で腱板や滑液包が骨に挟まれたり衝突することで痛みを起こします。
インピンジメントが起こる原因として、肘が下がった投球フォーム・肩周りの筋疲労・肩のインナーマッスル低下・肩甲骨の外転変位などが考えられます。
鍼灸治療で患部の痛みを改善します。また、投球フォームが原因の場合にはフォームの修正、肩周りの筋疲労・肩甲骨の外転変位が原因の場合は手技療法、肩のインナーマッスルの低下に対してはトレーニング指導を加えて行います。
関節唇とは、上腕骨骨頭の受け皿になる繊維性の軟骨です。投球をしすぎることで肩関節が捻じれて痛めたり、上腕二頭筋腱に繰り返し引っ張られることで損傷します。
関節唇は、一度損傷すると保存療法では完全に修復されません。重度の損傷がある場合は手術にて修復します。
損傷が軽度の場合には、肩周りの筋肉の硬さや短縮の改善、また肩甲骨や肩関節を正しい位置に戻すように手技療法を行い、肩のインナーマッスルのトレーニングを行います。
重度の損傷や改善がみられない場合は、専門医に紹介します。